2025年4月15日火曜日

AMリーディングカンパニーNano Dimension社

 【珈琲ブレイ句】『AMからようこそMIMへ』金属AMとMIMの連携が一段と活発になってきました。 

そこで、AMのリーディングカンパニーであるNano Dimension 社の買収経歴をメモしておきます。これで技術の深い専門性と鋭い視点が融合し、さらにAM技術が飛躍的に向上することでしょう。

Nano Dimension社

 2024/9 Mark Forged社を買収

 2025/4 Desk Top Metal社を買収

   2021/11 Desk Top Metal社がEX-ONE社を買収


《関連BLOG》

AMからようこそMIMへの棲み分けについて

これぞ「AMからようこそMIMへ」という記述を見つけた

Desktop Metal Studio system2 が溶媒脱脂工程省略化

2025年4月13日日曜日

中空MIMの始まりをまとめる

 【珈琲ブレイ句】MIMは、金型のスライドコアで成形できない中空部品を作ることができます。方法は2つ。 ①複数部品を組み立てて拡散接合で一体化する方法。②中子を使って二重成形し、中子を一次脱脂(水、触媒)あるいは二次脱脂(加熱)で消失させて焼結する方法です。

今回は、②の中子を使う中空MIMに関する最新の公開情報と特許情報を再調査し年代の古い順番に並べてみました。◎:特許が現在有効なもの

1977 日本楽器製造 粉末冶金PM+CIP→焼結

1989 マツダ(焼結カム)

1989 住重テクノセンター

1991 オリンパス光学

1991 セイコーエプソ

1992 住友重機械工業

1992 小松製作所

1995 北川鉄工所

1995 東洋機械金属

1997 西原章夫(リニアガイド)

1998 オリンパス

1998 インジェックス

1999 太盛工業(◎)

2008 JUKI(特許消滅、動圧軸受)

2010 清水製作所

2010 Megamet Solid Metals社(MIM2010会議発表、インペラ、触媒脱脂)

2010 BASF(触媒脱脂)

2011 IHI

2012 キャステム(◎フィラー添加)

2013 浜松メタルワークス(旧テイボー、世界PM2024発表、水脱脂

2020 積水化学(◎中子用PVA、水脱脂)

2021 第一セラモ(◎3Dプリンタ中子

【中子材質】水脱脂:ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリアクリル酸(PAA)他、 加熱脱脂:アクリル(PMMA)他、 触媒脱脂:ポリアセタール(POM) 

関連BLOG:中子を利用するMIMの特許を調べた(2020)

関連BLOG:アンダーカット形状を形成するための技術の流れ

2025年4月12日土曜日

溶媒脱脂に使うヘキサンは危険なのか?

 【珈琲ブレイ句】MIMの溶媒脱脂で使う溶媒の代表は、Nヘキサンです。しかし、常温で引火性があり危険だから使わない! と言われたことがあります。自動車のガソリンを自分で給油して、そのまま平気で運転している人に言われるとショックです。 そこで、危険の代名詞「水素」と「ヘキサン」と「ガソリン」の危険比べをしてみましょう。

ガソリン:可燃範囲は1.4%から7.6%。引火点は-40℃。

ヘキサン:可燃範囲は1.1%から7.5%であり、ガソリンとほぼ同程度。引火点は-22℃でありガソリンより高い。

水素:空気中の濃度が4%から75%という非常に広い範囲で可燃性大、無色・無臭。

結論:危険なのは、水素、ガソリン、ヘキサンの順です。すべて危険ですが適切に管理すれば問題ないのです。 今からヘキサンを使った溶媒脱脂を始めるならお薦めは、ドイツ製のLOMI社の溶媒脱脂装置かな? 機能だけでなく安全性でも優秀です。さらに汚染溶媒を蒸留再生までしてくれます。補足:ヘキサンは吸引すると神経系の障害を引き起こす可能性があるので、ブラウン体に残ったヘキサンの蒸発を考慮して天井に局所排気を付ければ安心です。

500件を超えるMIMのブログ(日曜MIM知る)のタイトルがすべてわかります。

2025年3月25日火曜日

変動係数CVとSN比の違い

 【珈琲ブレイ句】ジャーマン先生は寸法管理にはCV(変動係数)で評価せよと説いています。CV(%)=(標準偏差S)÷(平均U)×100です。ジャーマン先生は典型的な値として±0.3%としています。

《注意》CVは実験計画法や品質工学などの最適化実験のために解析する場合の特性値として計算にはそのまま使えません。その理由はCVには加法性が無いためです。それを可能にしたものが田口玄一先生が提唱するSN比です。SN比をザックリ説明するとCVを対数の世界にしたものです。対数の世界にすると加法性が出てくるので計算できるのです。真数に戻したければ逆対数(指数変換)を行います。

関連BLOG:品質は「分散」と「平均値」の合わせ技で決まります

関連BLOG:MIMの公差はどのくらい

関連BLOG:精度に関係する用語を学び直して図示化した

500件を超えるMIMのブログ(日曜MIM知る)のタイトルがすべてわかります。

 MIM指南書(本)を直販でお安く販売しています。
 直販購入はHPに記載のアドレスへ申し込んでください。


金属粉末射出成形法によるロバスト性の高いSKD11の創製

オープンアクセス論文になっているので掲載ページを載せておきます。

J-Stage 粉体および粉末冶金 2005 年 52 巻 10 号 p. 717-721

【珈琲ブレイ句】20年前の量産技術開発論文です(なつかしい)。開発目的は、MIM-SKD11をフルチャージで脱脂焼結できるロバスト性の高い高精度材料の開発です。量産技術開発なのでQCDで評価しベストではなくベターな仕様を量産材に採用しています。この事例は、ピン止め添加材を使っていないのでJIS規格内の材料です。超高速回転の工業用部品に採用されています。惚れ惚れする球状化組織ができますよ。

 MIM指南書(本)を直販でお安く販売しています。
 直販購入はHPに記載のアドレスへ申し込んでください。

500件を超えるMIMのブログ(日曜MIM知る)のタイトルがすべてわかります。

2025年3月8日土曜日

バインダー分離(偏析)について掘下げる

MIM指南書、第5章 MIM不良の原因と対策の25番目として185頁と186頁間に追加します。

5.25 バインダー分離による不良

Powder-binder separation

金属射出成形 (MIM) における「バインダー分離(偏析)」とは、射出成形プロセス中にバインダー材料が金属粉末から分離すること。その結果、原料内でバインダーが不均一に分散され、密度の不一致や潜在的な弱い領域により、最終的な焼結部品に欠陥を生じさせる可能性がある。

【現象】

1 収縮の不均一

 部品の様々な領域でバインダー量が不均一になるため、焼結収縮率がそれらの領域で異なる。そのため、最終部品の反りや歪も加わり寸法が不正確になる。

2 焼結密度不均一

 バインダーが少ない領域の多孔性が高くなり、部品の強度と機械的特性を低下させる。また、薄肉部分にバインダーが独立した微少片となり、焼結後ピンホールや凹み不良となる。

【原因】

バインダー分離は、粉末とバインダーの不適切な混合、原料の流動性(レオロジー)の悪さ、射出時のせん断速度の高さ、粉末粒子サイズのばらつき、金型設計の問題などの要因によって発生する。

【対策】

1 原料配合の最適化:適切なレオロジーと粒子サイズ分布を持つ適切なバインダーシステムを選択する。

2 混合プロセス制御:金属粉末とバインダーを完全に混合して、均一な混合物を実現する。

3 金型設計の考慮事項:射出時のせん断力を最小限に抑えるために、適切なゲート位置とフロー パスを使用して金型を設計する。

4 成形射出条件:射出圧力と流量を調整して、原料の均一な分配を確保する。

【珈琲ブレイ句】バインダーの分離による不良として体験したことがあるのは、薄肉部分の収縮率が大きくなることによる寸法マイナスNGだけです。しかし、昨日、あるMIM講習会で発表された改善事例では、1mm厚部分に独立したバインダーの微少片が見つかり(CTスキャン)、焼結後にピンホールや凹み不良となるものでした。フィードストックの品質には問題が無く、射出成形で分離バインダーの微少片が発生するという事例に初めて会いました。この事例の対策は、バインダーの配合設計から見直したそうです。

◆バインダー分離の評価方法について◆ ①ジャーマン先生の本のP152 Fig.6.17 にジグザグ金型の試験は、成形性と粉末結合剤分離の両方を測定できる有益な方法だと紹介されています。ジャーマン先生の本 ②こちらもジャーマン先生が絡んでいる論文ですが、キャピラリーフローを測定すれば判定できるというもので、バインダー分離が発生するフィードストックは、せん断速度を1000(1/s)以上大きくしていくと見掛け粘度が下がらないで逆に上昇していくので評価できます。(”The effects of material attributes on powder–binder separation phenomena in powder injection molding”  Tirumani S. Shivashanka, Ravi K. Enneti , Seong-Jin Park , Randall M. German , Sundar V. Atre)




 MIM指南書(本)を直販でお安く販売しています。
 直販購入はHPに記載のアドレスへ申し込んでください。

500件を超えるMIMのブログ(日曜MIM知る)のタイトルがすべてわかります。


2025年3月4日火曜日

MIM精度の工程展開

 【珈琲ブレイ句】精度を改善するときは、「正確さ」と「精密さ」に分解する必要があります。正確さは平均値、精密さは分散のことです。それからMIMの場合は、「変形」(スランプ)が絡んできますので厄介です。それらがどの工程で発生するのかを表にまとめているので紹介します。工程FMEAをやられている向上心の高いエンジニアさんの参考になれば幸いです。


引用:拙著、型技術連載(2021年第5回)MIM入門、タイトル:基礎から学ぶMIM金属粉末射出成形入門、サブタイトル:金型設計から新事業展開まで、表3 MIM精度の工程展開

 MIM指南書(本)を直販でお安く販売しています。
 直販購入はHPに記載のアドレスへ申し込んでください。

500件を超えるMIMのブログ(日曜MIM知る)のタイトルがすべてわかります。

2025年2月28日金曜日

粒径と相対密度の焼結温度依存性

SUS630(水アトマイズ粉末)のMIMにおける、粒径を横軸、相対密度を縦軸にして各焼結温度ごとのグラフに描きなおした。

参考文献:Noriyuki Yasui, Hiroshi Satomi, Hiroshi Fujiwara, Kei Ameyama, Yoshimitsu Kankawa ”The Influence of Powder Size on Mechanical Properties of Small MIM Parts”,2006 POWDER METALLURGY World Congress B02-02-1

【珈琲ブレイ句】座標を粒径と相対密度の二次元グラフに描き直した目的は、微細粉末であれば焼結温度の炉内バラツキに影響されず高密度が実現できることを直感でわかるようにしたかったのです。品質工学で言うロバスト性が高いということです。粒径が2.7μmの水アトマイズ粉末であれば、たとえば炉内温度のばらつきが300℃(1350-1050℃)あったとしても焼結相対密度が95%以上になるということです。300℃の炉内温度ばらつきは極端ですが、それでも実際の量産炉の炉内温度バラツキ幅は±10℃、さらにガス対流も加わり実際には±15~20℃程度あるのでMIMの焼結密度が変動します。これが寸法変動につながっています。その影響を小さくするための一つの策として微細粉末化が良いということです。

太盛工業さんの「超高精度MIM±0.1%」技術の大黒柱はコレだと推察しています。

最後に、「SUS630粉末」の上記研究における、微細粉末化の欠点を上げておきます。①粉末のコストが相対的高価になる(でも、部品が小さければ、原価構成上ほとんど問題ない。)。②水アトマイズ「SUS630粉末」において、2.7μmまで微細になるとBCC構造(マルテンサイト)だけでなくFCC構造(オーステナイト)も出現してくる。これは、微細なほど比表面積が大きくなるので水アトマイズによる酸化量が多くなり、微細SiO2が析出するためだと説明されています。結果、硬度が低下していることを裏付けており、おそらく機械的性質も低下する可能性を示唆しています。

関連ブログ:高精度化に必要な「焼結機能窓 sintering window」とは?

《ことば》品質工学における「ロバスト性が高い」とは、製品やシステムが様々な外的要因(ノイズ)の影響を受けても、性能や品質が安定している状態を指します。つまり、変化に強く、ばらつきが少ないことを意味します。

500件を超えるMIMのブログ(日曜MIM知る)のタイトルがすべてわかります。


2025年2月16日日曜日

MIMフィードストック混錬の復習

MIMフィードストックの混錬について、もう一度復習してみた。混錬の方法は識者により微妙に異なるがその4つの目的は同じである。

《MIM混錬4つの目的》1.金属粒子の表面にバインダーを均一にコーティングすること 2.バインダーシステムのすべての成分(ポリマー、湿潤剤、界面活性剤)を均一に混合すること 3.粉末凝集塊を分解すること 4.粉末やバインダーの分離が無い均一なフィードストックを得ること

《Hさんの混錬方法》①高融点のバインダーを加熱する。②残りは、それぞれの融点が低下する順に混合物に追加する。③バインダー成分が混合されたら、金属粉末を追加する。③’一部のシステムでは、高融点バインダーの溶融中、低融点成分の添加前に金属粒子を添加し金属粒子へのバインダーコーティングを優先させる。④原料の最終混合は、原料のガス抜きのために真空中で行う。

《Gさんの混錬方法》混錬作業には2つの方法がある。ひとつは粉末とバインダーを乾式混錬した後に混錬機にプレミックスとして入れる方法。もう一つは、配合機内でバインダーを加熱し溶融させ、そこに粉末を加える方法である。 バッチ式混錬機による後者の方法 ①バインダーは最高溶融温度の成分から始めて加熱下で混錬される。蒸発または劣化を避けるために、融点が低いバインダー成分では、その適温度まで下げてから添加するようにする。②バインダーと混錬する前に界面活性剤を粉末と混錬する。混錬中、表面処理された粉末は溶融バインダーに添加され、液体は毛細管作用により粒子の凝集した塊(クラスター)に吸い上げられる。これは粒子の潤滑性を上げさらに凝集を解く効果がある。熱可塑性バインダーの場合、混錬はせん断が支配的である中間温度で行う。粘性を下げることと混錬物に関連する降伏点を排除することの両方に熱が必要である。高すぎる温度で混錬すると、バインダーが劣化するか、混錬物の粘性が低いために粉末から分離してしまう。

《参考文献》Hさん:Handbook of Metal Injection Molding P80 4.4 Mixing technology、  Gさん:Injection Molding Metals and Ceramics  P25 Chapter Two Feedstock

【珈琲ブレイ句】復習すると新しい気づきがありました。それは、「混錬の最終工程は真空中で行う」の項目です。そこまで拘るのは凄い。ただし、これは混錬機に何を使うかにもよりますね、実際の量産工場では、混錬中に脱気できる加圧混錬機や二軸スクリュー押出機が使われているのでエアーの巻き込みは解消できていると思われます。他の気づきは、液化温度による投入順番の工程設計や、あらかじめ界面活性剤を粉末と混錬しておくなど、使用するバインダーや粉末仕様によって最適な混錬方法が研究されていることです。知っているけど復習することは固定観念を見直すよい方法ですね。

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】

2025年2月14日金曜日

Niフリーステンレス(窒素吸収法)を掘下げる

母材:フェライト系ステンレスGA粉末 Fe-17Cr-12Mn-3Mo-0.2N

バインダー成分・配合:PW,PP,DOP、30VOL%

MIM成形体の脱脂:加熱400℃、N2

焼結+窒素吸収:室温~980℃まで真空、980~1250℃+窒素導入、焼結温度1250~1300℃+窒素0.2MPa、1200℃+窒素×5H、炉冷

熱処理:1200℃溶体化(オーステナイト化)+900℃5h時効

MIM成分:Niフリーステンレス Fe-17Cr-12Mn-3Mo-1N

引張強度:約1050MPa   硬度:250HV

《比較》Catamold P.A.A.A.C.E.A.

引張強度:≧1090MPa   硬度:250~300HV

参考:青山陽亮、黒田義和ら ”金属粉末射出成形で作製したオーステナイト計ステンレス鋼の引張特性に及ぼす窒素添加と変形双晶の影響”J.Jpn.Soc.Powdwe Metallurgy Vol.56 No.3 ,特許第5616299号 、 BASF Data Sheet D/CA 017a March 2008 Catamold P.A.A.A.C.E.A.

【珈琲ブレイ句】金属アレルギーに優れ、医療で使うMRIに影響されない非磁性体の要求を叶える「窒素吸収法を使ったニッケルフリーステンレス製造法」は、ガウス㈱の特許(出願2011/8/9)です。フェライトステンレスに窒素を吸収させてクロムの代わりに耐食性を向上させるものです。特許を読み込むと、さらにオーステナイト相を安定させるCuを2~3wt%、強度向上目的の結晶粒微細化のピン留めとしてNbを0.02~0.06wt%添加するのもイイヨと教えてくれます。

Catamold P.A.A.A.C.E.A.のData Sheetを見るとNiが最大0.1wt%加えられています。相対的に強度と硬度が少し高いのはNi微量添加の効果かもしれません。

 

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】

2025年2月9日日曜日

Desktop Metal BMD Studio SystemによるTi-6Al-4Vの機械的特性

 Desktop Metal社のBMD Studio System(MEX3Dプリンター)で積層したTi-6Al-4Vの機械的特性が、MIMだけでなくロストワックスにも肩を並べているので記録する。

試料名:引張強度Mpa、伸び%、相対密度%、酸素%

Desktop Metal BMD製:845MPa、17%、97.5%、酸素量不明

MIM製(細Al-4V調合粉末):930MPa、15.8%、97.5%、0.34%

MIM製(粗Al-4V調合粉末):880Mpa、14.5%、96.7%、0.26%

MIM製(合金粉末):850MPa、13.7%、97.6%、0.23%

ロストワックス(エリー材):890MPa、15.2%、鋳造品、0.15%

参考:MIM:高温学会誌 第36巻 第2号(2010年3月)、三浦秀士、伊藤芳典/ ロストワックス:NASA Technical Paper 3288 1992

【珈琲ブレイ句】金属3Dプリンター(Sinter based Metal AM)のMEX方式で注目しているのがDesktop Metal の「BMD」です。何が気に入っているのかというと、成形材が棒状のフィードストックを使っているところです。◆FFF方式と比較して何が素敵なのかというと・・・。FFF方式は巻き線フィラメントを使っているので、柔軟性を持たせるためにフィラメント内のバインダー量がメチャクチャに多いのです。バインダーが多いとスランプ変形が大きくなり、当然収縮率が大きくなるので焼結寸法精度が悪くなります。◆一方、BMDの成形材料が棒状のフィードストックということは、MIMと同等のフィードストック仕様を展開できるということです。究極のMIM材料はバインダー量を極限まで減らし高精度化を狙っているのですが、それを展開できる可能性があるのです。◆したがって自作したMIMフィードストックで棒を作れば3Dプリントできるのです。ただし、失敗してもメーカーは保証してくれませんので自己責任でチャレンジ!

◆蛇足:BMDのチタン合金製造ではStudio Systemのフルセットつまり、溶媒脱脂装置が使われています。Studio System2.0(溶媒脱脂工程省略)ではカーボンコントロールが難しく活性金属では避けられているようです。

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】

2025年2月4日火曜日

MIM脱脂焼結炉(HIPER炉)の客観的研究

 【珈琲ブレイ句】MIM脱脂焼結のためのMIM専用炉としては「SHIMAZUが大好きなのですところが近年そっくりな「HIPERが登場していますこの炉が実に優れているのでまとめておきますできるだけ中立・客観的立場でまとめていますが、少し「自分の意見」もいれています。HIPERさんは元島津さんのエンジニアだったそうで基本仕様はSHIMAZU炉流ですしかしユーザー目線でいくつかの改善仕様が組み込まれており島津先生を超えるために死に物狂いで開発をしたんだろうなと感じる名品なのです。

【温度制御】《計測》炉内温度とタイトボックス内温度のダブル計測(カスケード接続)、カスケード制御によりプログラム応答80%。《加熱》独立制御できるヒーターで加熱(マルチゾーン独立温度制御システム)により炉内温度ばらつき<±1℃。「これならJIS化学成分のハイカーボンの鋼でもフルチャージできますね。」

【ガス流制御】《島津炉と逆のガス流れ方式》実験結果では焼結体のバラツキは減少したそうです。「未確認ですが、黒鉛断熱材が汚染される可能性があるので、私は確認できるまで疑心暗鬼です。∵クロム等の蒸発金属汚染問題です。」《その他のガス流制御》いろんなバルブを追加して一次流れ二次流れを設計できるそうです。ガス対流のばらつきを最少化するためのダメ押し対策です。「熱伝達3要素をしっかり理解しコントロールしようという徹底的な攻めの開発姿勢を感じます。」

【設置面積のミニマム化】《標準仕様で電源を炉体の上部に配置》「ユーザーの立場でよく考えられています。こちらは島津さんでも依頼をすればやってくれます。」

「国内商社の数社がHIPERを扱っています。通常メンテナンスは、国内専門業者に頼めば大丈夫でしょう。心配なのは、消耗交換部品ですが、主要部品だけ在庫していれば安心できますね。


【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】

2025年1月12日日曜日

Mg合金のMIM研究事例

活性金属マグネシウム合金のMIM研究の事例を記録しておく。

《粉末》球状ガスアトマイズMg粉末+球状ガスアトマイズMg+10Ca粉末を混合した「Mg-0.9Ca」粉末

《バインダー》PW,SA+PPcoPE(25wt%)

《粉末負荷》74vol% (バインダー36vol%)

《溶媒一次脱脂》ヘキサン45℃×10~15H(LOMI)

《焼結るつぼ》Mg粉末ゲッターで囲った焼結るつぼ内で焼結

《加熱二次脱脂①②③+焼結④》①~300℃、Ar ②~400℃、Ar+5%H2 ③~635℃真空 ④635℃×64H、Ar

《結果》最大引張強度 142 MPa、降伏強度 67 MPa、弾性率 40 GPa、伸び 8%

文献:Metals 2016, 6, 118 ”Metal Injection Molding (MIM) of Magnesium and Its Alloys”Martin WolffThomas Ebel、 Article in Metals-Open Access Metallurgy Journal · May 2016, Helmholtz-Zentrum Geesthacht, Centre for Materials and Coastal Research, Institute of Materials Research, Division Metallic Biomaterials, Max-Planck Straße 1, Geesthacht D-21502, Germany 


【珈琲ブレイ句】Mg合金は生分解性材料としてバイオメディカル用途に非常に適しているのですが、やんちゃな活性金属であり蒸気圧も低いのでMIMとして脱脂・焼結させるのが難しい課題があります。いろいろ工夫されているので勉強になりました。本研究からの学びは6つ。

①焼結助剤としてCaを0.9wt%添加するのが機械的特性上最適。

②Mg粉末ゲッターを使った焼結るつぼ。

③バインダー残留物を完全に除去するため、焼結直前まで真空排気で二次脱脂。 

④Mgの焼結は温度635℃で64時間もの時間が必要。∵Mg粒子表面の酸化被膜が粒子間の拡散を阻害するため。

⑤るつぼ内の温度差(±12K)により、Mgの昇華を管理できないため、±1Kの炉が望まれていた。

⑥バインダーのポリマーとしてポリプロピレンコポリマーポリエチレン(PPcoPE)を使い配合比を25wt%にすることで成形不良(ウエルド等)が減り、機械的特性で有利。

PPとPEの両方の長所を兼ね備えた共重合体高分子ポリオレフィンのポリエチレンコポリマーをMIMへ採用した事例は発見でした。残渣だけでなく成形性が向上したという報告なのでAl合金、Ti合金でも効果がありそうですね。

D1956

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】