2024年12月28日土曜日

酸化脱脂について掘り下げる

 酸化脱脂を使った素晴らしい事例を掘り下げる。

◆グリーン体:MEX積層体(エスラボ)◆SUS316Lフィードストック(第一セラモ)◆真空脱脂焼結:VHS-CUBE(島津産機システムズ)◆酸化脱脂:一次脱脂で乾燥空気を導入し加熱脱脂とともに粉末を酸化させる。さらに連続して還元と焼結を行う。◆結果:焼結密度98.9%(7.6)、引張強度532MPa、伸び58.5%、硬度HV174、炭素0.001%

引用文献:“材料押出MEX技術の最近の動向と展望”、粉体および粉体粉末冶金 第71巻第12号639、山田、武田、江、河本、和田、加藤、京極

【珈琲ブレイ句】酸化脱脂をうまくコントロールしているので感激です。そのポイントは4つ。①乾燥空気を真空脱脂焼結炉に導入する。②乾燥空気導入温度を管理することで適切な粉末酸化量を作る。③その温度は黒鉛部品との反応温度未満に温度インターロックをかける。④還元を理論通りに反応させる。 

温度インターロックを掛けて炭素炉に空気を導入させる発想がなかったので勉強になりました。普通の大気加熱脱脂だと240℃以上で酸化が急激に進むので残留酸素が心配になり個人的に確認したところ、酸素量も0.003%レベルで管理されているということでした、流石です。

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2024年12月13日金曜日

PEとPOMのポリブレンドに関する研究から学ぶ

PEとPOMのポリブレンドにおける配合比研究で、特性値が非線形になっている面白い結果がいくつかあったのでメモしておく。

POMにPEを30~50%混合混錬したポリブレンド成形体の粘性係数と結晶化度は凹曲線の関係でPE50%近傍でで最小値を示す。また、収縮率は凹曲線の関係でPE50%で最小値を示す。

衝撃強度はふた山の複雑な曲線をを示しPE30%でPOM100%より高くなる。伸びは凹曲線の関係でPE30%~PE70%の範囲で最小値を示す。

  参考:”PE(ポリエチレンPOM(ポリアセターのポリブレンドに関する研究” 工学院大学山口章三郎佐藤伸司、310,P144-146 


【珈琲ブレイ句】 

MIMバインダーに採用するなら、POMにPEを30%程度ブレンドすると堅物のPOMが扱い安くなる可能性があることを学べます。粘性係数が下がるので成形がしやすく、収縮率が小さくなれば成形寸法ばらつきが小さくなり、衝撃に強くなるのでグリーン体の欠損不良を低減できそうです。すでにPOM系バインダーには採用されていると推察しますがどうでしょうか?

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2024年11月28日木曜日

成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」

成形品重量ばらつきを与える計量不安定因子」について掘下げる。

①材料(物性値のばらつき、配合剤等の混合率のばらつき、製造ロット品質のばらつき、温度・湿度管理の差異によるばらつき、成形時の熱履歴の差異による分子量のばらつき  

②金型(成形サイクル内での金型温度の時間的ばらつき、金型内の部位による金型温度の空間的ばらつき、複数キャビティにおける設計製造上のばらつき)  

③-1射出成形機(可塑化・計量工程における均温化のばらつき)

 (1)供給熱エネルギーのばらつき(圧力のばらつき、温度のばらつき、体積のばらつき、分子量(熱履歴)のばらつき)  

(2)樹脂の噛込み不良(突発的に計量動作不能に陥る状態  

(3)ソリッドベッドのブレークアップ現象 (固相の連続体が可塑化途中で分断することに起因する液相温度分布のばらつき)

③-2射出成形機(射出工程における体積のばらつき)

(1)計量工程終了から射出工程開始までの間の体積ばらつき

(2)射出工程開始直後の体積ばらつき

インライン式の射出成形機では,逆流防止機構の構造的な課題から射出時に微少量の樹脂逆流が発生し,射出工程の計量不安定因子となる。


【珈琲ブレイ句】ファナックのロボマシン研究開発統括本部長の高次聡さん(Takatsugi, Satoshi)の東大博士論文射出成形機における計量不安定現象の可視化解析と安定化技術の開発からの引用です。

個人的に注目したのは、逆止弁(チェックバルブ)からの逆流問題のひとつである、シリンダー(バレル)と逆止弁外径との隙間と逆流量の関係を解明した実験です(図7.12)。隙間を3水準作った実験で、直径差Φ400μmになると、逆流量の指標である”スクリュトルク時間積分値”が急激に大きくなっていることがわかります(分散も大きくなっています)。この指標を使えば、逆流量の安定性を監視することができ,逆流弁の交換時期の予測が可能になるという内容です。

この論文の中には逆止弁は常に予備を用意するように!など、細かい指導まであり、ほんとうにありがたい教科書です。流石!日本のロボットと工作機械のトップリーダーFANUCですね。 

PS. MIMの射出成形の場合は、成形材料に多量の金属粉末が入っているので隙間を大きくしないとシリンダーロックが発生します。それでも隙間は大きくてもΦ400μm程度にしたいですね。隙間が大きすぎると成形品の重量バラツキが大きくなってしまうということを、ここで学べたのですから。

MIMの成形品質を徹底的に向上させたいと考えている技術者の参考になればうれしいです。

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2024年11月16日土曜日

金属BJTにコーティングしてHIPする工法(都立大)

都立大学の研究が面白いのでメモしておく。「金属BJT積層体の高密度化に向けたスラリーコーティング技術の適用(刈谷香槻、長田 / 小林研究室)」

《課題》金属BJTでSKD61の密度を高めるため、焼結の温度を高く時間を長くすると結晶粒が大きくなる課題があった。

《対策》BJT積層体をコーティングし低温焼結後にHIP処理を行い結晶粒の成長を押さえながら高密度化させる。

 コーティングスラリー:SKD61のMIM粉末80mass%+PVB樹脂等

 コーティング:2回、厚さ約600μm

 低温焼結:1200℃×2H

 HIP:1100℃、100MPa×3H

《結果》焼結密度約7.0g/cm3、結晶粒約50μm

 【珈琲ブレイ句】BJT積層体は残念ながら開気孔が少し残る構造体なのでHIPを掛けても完全にその効果を得られません。でも表面に開気孔を塞ぐコーティングをすれば等方向加圧の効果が得られます。これを利用して低温焼結で作った微細結晶粒をそのままに、次に低温HIPに掛けて密度だけを上げるという作戦ですね。そして、なるほどと思ったのは、普通なら仮焼結品にコーティングを考えますが、これは積層体へコーティングしているので、コーティング材も仮焼結され、表面に薄い金属膜が形成されるのでHIP処理の効果が得られるのです。つまり「なんちゃってメッキ」でもあるのです。異材種のコーティングもおもしろそう。

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2024年11月6日水曜日

全く新しい粉末積層造形法

 【珈琲ブレイ句】既存5種類のMIM-Like AM(Sinter-based Metal AM)のどれにも該当しない全く新しい積層造形法の登場です。詳細は下のBLOGに先行公開していましたが、このたび特許登録申請(2024/11/5)を行いました。パートナー絶賛募集中。

関連BLOG:特許先行公開 特願2021-148967 粉末積層造形法

原理は『砂絵』です。バインダーを先に塗布してそこへ粉末を載せる方式で、BJTの逆です。微細なマイクロ積層造形物でニーズがあると考えています。粉末も数ミクロンからサブミクロン以下まで可能です、なぜならば粉体流動を考える必要がないからです。微細粉末塊をドサッと被せればよいのです。粉末は金属やセラミックスあるいはその混合粉末を対象としていますが、超微細粉末なら何でもOKです。積層体はPIM技術を展開して脱脂・焼結を行います。

【NEW特許 パートナー絶賛募集中】

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2024年11月2日土曜日

プラズマ粉末球状化のリサイクル粉末は高品質

 【珈琲ブレイ句】TEKNA社のプラズマ粉末球状化装置の裏の顔「粉末のリサイクル」についてメモしておきます。この設備はMIM用の微細粉末に対応できないのですが、すこし大きな粉末を使用するL-PBF等の使用済粉末をリサイクルすることが可能です。

L-PBFの造形で残った粉末は繰り返し再生材として使いますが限界があります。それは、表面にサテライトが付着し流動性が悪くなったり、凝集したり、酸素量も増加するためです。

その再生材をプラズマ粉末球状化装置を通すことで、より綺麗な球状に戻し、なんと純度と密度も向上させることができるのです。

INCO718の事例ですと、酸素量が酸素含有量が200ppmから160ppmに減少しています。当然形状はまん丸です。プラズマが高温なので母材の融点より沸点が低い元素は蒸発します。また、プラズマ雰囲気により不活性、酸化、還元を切り替える事ができるので各種の金属に対応できるようです。

課題はリサイクル費用ですが、スーパーアロイ等の高価な粉末であれば採算性が合うのではないでしょうか。今後脚光を浴びる技術で間違いありません。

情報:EFDインダクション株式会社(稲垣)、Tekna Plasma Europe, Macon, France "Recycling And Reconditioning of Additive Manufacturing Metallic Powders by RF Plasma Treatment " Euro PM2024 - Session 51: Powder Recycling & Sustainability

関連BLOG WORLD PM2024 YOKOHAMA展示会のみどころ

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2024年10月30日水曜日

品質工学と実験計画法の違い

 【珈琲ブレイ句】このBLOGでは、多くの品質工学(タグチメソッド)を使ったMIMのパラメータ設計の事例を紹介しています。タグチメソッドとして紹介していますが、実は純粋な品質工学ではなくて従来の数理統計学を使った実験計画法の事例が多く含まれています。この傾向は特に海外の論文に多く散見されます。なぜそうなのか考えると、その理由は田口玄一先生の業績が偉大すぎたからだと思っています。

品質工学は、「タグチメソッド」とも呼ばれています。タグチメソッドは田口玄一先生が独自に開発した革新的かつ独創的な工学です。一方、数理統計学者の必読書でバイブルの「実験計画法上・下 丸善」の著者も田口玄一先生なのです。どちらも田口玄一先生の業績なのです。というわけで海外で「タグチメソッド」が名前から作られているので、品質工学と実験計画法の区別があいまいになっていると思われます。どちらもたいへん素晴らしいのですが、目的・手法が異なるのです。この2つは何が違うのかをまとめておきます。



従来の実験計画法では左図のAを最適解としますが 品質工学では、Bが最適解と考えます。品質工学では、市場に潜む外乱誤差・環境誤差の下でシステムの出力品質が安定する設計を追求するためです、つまりロバスト性(頑健性)の高い設計品質を求めるのです。出力の最大値はAですが、AとBの入力のバラツキを考えると、出力のバラツキはBの方が少ないことを読み取ってください。ベストではなくベターを選んで誤差に対する頑健性を追求しています。

2024年10月29日火曜日

4方式のMEXの特徴をまとめる

MIM-Like AM(Sinterbased Metal AM)のMEX積層3Dプリンターは、大きく4種類に分類できる。その特徴をまとめておく。

『フィラメント方式』巻き線状の成形材料を使って溶融積層するもの。射出機構は、材料側面をギヤ等を使って送り出す。成形材料を巻き線にするために、相対的に粉末量が少なめでバインダーは柔軟性が高く、事前に予熱して軟化させることが推奨される。また一部では、材料の外周にスキン層70μmを形成させて折れや削れを防止させているものがある。積層装置は、格安で手に入るので入門者にやさしい。また高価な量産機もある。

『プランジャー方式』棒状の成形材料を使って溶融積層するもの。射出機構は、溶かした棒状材料をプランジャで押し出す。成形材料はMIMフィードストックに近いものが使える。メーカーの用意した材料を使う。装置は高価。

『スクリュー方式』ペレットあるいは粉砕した成形材料を溶融積層するもの。加熱したシリンダーの中のスクリューで成形材料を移送しながら溶かす。溶融材はスクリュー内で加圧されるので脱気効果や若干の再混錬も期待できる。射出機構はスクリューの回転により送り出す。成形材料はMIMフィードストックに近いものが使える。材料の自由度が高く自作の粉砕材料も使える。装置は高価。

『プリプラ方式』スクリュー方式とプランジャー方式を合体させもの。竪型のプリプラ射出成型機にXYテーブルを取り付けたイメージ。

 【珈琲ブレイ句】量産が目的であれば、プリプラ方式が理想の方式だと感じています。MIMフィードストックが使えるので積層体の密度を高く成形することができれば、文字通り「MIM-Like AM」「ほぼMIM」が実現できるからです。たぶん日本の射出成形機メーカーは、密かに開発中ですよね!? made in JAPAN  期待しています。


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MIMの精度は2つの分けて考えること

 【珈琲ブレイ句】MIMの精度(カタヨリ+分散)は、2つに分けて考えるようにしています。そのイメージを図にしましたので載せておきます。SLUMP変形は「バインダー仕様設計問題」と「粉末量設計問題」、そして、収縮は「粉末量設計問題」です。粉末量はCSL(CPVP)から決定すべき設計パラメータです。


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2024年10月28日月曜日

品質とは

 【珈琲ブレイ句】「品質」についてJISで確認すると、『製品やサービスが使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体:JIS Z 8101』ということです。ここまで抽象化されていると、どんなことにも、いつの時代であっても真理ですね。ものすごく深い。

『品質とは、製品やサービスが使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体』


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2024年10月25日金曜日

MIMフィードストック再生材利用のポイント

 MIM成形で発生するグリーン体(成形体)以外の、スプルーとランナーを再生材として利用する方法(リサイクルあるいはリユース)についてポイントのみ箇条書きでまとめておく。

《再生材の利用法》リユース法:粉砕あるいは粒断してバージン(粉末、ペレット)に混合する。リサイクル法:バージン材と再生材を配合し混錬から作り直す。

《再生材配合比》一般的には再生材配合比は50%が主流。50%材の物性保持率は再生回数3回目からほぼ一定の90%に飽和する。

《焼結体密度》新材と再生材の焼結体密度は同等と考えてよい。

《再生材の流動性》流動性は新材より良くなる。低分子化。

《再生材の焼結収縮変動と対策》新材より焼結収縮率は小さくなる。そのためバインダー体積消失相当の樹脂を適量配合しチューニングする必要がある。

《管理特性》フィードストック密度、フィードストックの流動性、焼結体の収集率


【珈琲ブレイ句】MIM方案設計によって発生するスプルーとランナーの比率はMIMメーカーによって異なるので各社固有の再生材混合比率があると思われます。できるだけ再生材が在庫にならないように比率を決めるべきです。

一番現場で問題になるのは、焼結体の寸法不良です。バインダー消失(揮発)による寸法増加。さらに逆方向の、低分子化(流動性向上)に伴う成形体重量微増による寸法微増。これらの総効果による平均値のカタヨリが課題になります。

その課題を解決させる方法として田口メソッド・パラメータ設計が有効であると確信しています。具体的には、誤差因子を再生回数、制御因子に欠損部分の樹脂添加量、成形条件因子を含めた解析結果から、ロバスト性の高い最適な成形条件がわかり、樹脂添加量と収縮率の線形式を計算させることが可能です。

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2024年10月22日火曜日

開発のフロントローディングの波に乗るためには

 【珈琲ブレイ句】最近、『開発のフロントローディング』という言葉が頻繁に出てくるようになりました。これは文字通り「前倒しで開発を進めること」ですが、ひと昔前の「コンカレントエンジニアリング」の上位概念だと解釈しています。

企画・開発段階で設計品質を造りこめば その下流の製造で品質不良の発生が無く 市場でのトラブルも無くせるというものです。開発段階での仕様変更は、変更の自由度が大きく、変更コストが安いのです。一方、下流の製造部での変更になると逆になり、ほとんどの場合、少ししか変更できないのです。さらに重大な不適合が市場に出てリコールにでもなったら経営が傾きます。

そのためには、企画・開発の初期段階で①「デザインレビュー」をすることです。「デザインレビュー」は開発部門だけでなく、関連する生産技術、製造部門、品証部門の意見を集めることが重要です。②コンカレントエンジニアリングとしては、品質工学(パラメータ設計、タグチメソッド)、FMEA、品質機能展開等の活用等があげられます。③また、MIMの射出成形シミュレーションの活用もトライすべきです。④さらに、製品開発者は、RP(Rapid Prototyping)であるMIM Like AM(Sinter-based Metal AM、MEXやBJT等)を活用して、開発段階において実機での機能試験を並行して行えば完璧です。焼結体の形状が決定したら、安心して金型が必要なMIM製造へシフトできるのです。

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2024年10月20日日曜日

超高張力Fe-Ni鋼

『MIM指南書増補セルフ』

 MIM指南書「金属粉末射出成形ガイドブック」6.2 材料別研究論文ダイジェスト 下記内容をA5サイズで印刷し、P204と205の間に挟んでください。粉末鍛造に匹敵する超高張力鋼のMIM研究データです。


【材質】超高張力Fe-Ni鋼, Fe-4~8Ni・0.4C,混合,

   CIP: 3.65μ, WA-Ni: 6.43μ

【バインダー/配合比】

 APP:PW:CW:SA=20:69:10:1,  50~60VOL%

【1次脱脂条件】溶媒,ヘプタン, 60℃×4H

【2次脱脂,焼結条件】加熱, Ar, 600℃×1H,

 予備900℃×0.5H,真空, 1250℃×1H

【熱処理条件】Ar, 900℃×0.5H,油冷, Ar, 200t℃×1H

【焼結密度】95%以上, HV600

【機械的性質】 引張強度MPa&疲労強度MPa

 Fe_4Ni・0.4C : 1900, 520

 Fe-6Ni"0.4C : 2040, 650

 Fe-8Ni-0.4C : 1660, 611

 参考 4600 : 2120, 650

【備考】Ni6%で4600粉末鍛造鋼に匹敵する引張強度と疲労強度を得られた。

【文献】三浦秀史,長田稔子, Ziqi Song, 安井健太,工藤健太郎,”Fatigue properties of MIM super-high strengthened Fe・Ni steels with heterogeneous microstructures, POWDERMET2C116 Conference, June 5-8, 2016, Boston, Massachusetts, USA" ,Powder Injection Moulding International September 2016

チタン合金(Ti-6Al-4V)

 『MIM指南書増補セルフ』

 MIM指南書「金属粉末射出成形ガイドブック」6.2 材料別研究論文ダイジェスト 下記内容をA5サイズで印刷し適切な大きさに切り抜いて、P224の下へ貼り付けてください。

【材質】Ti-6Al-4V+1%C, AP&C,プラズマA, <25μm

【バインダー/配合比】NRC独自,グラファイト1%添加

【1次脱脂条件】溶媒

【2次脱脂,焼結条件】加熱800-900で, 1250℃x 8H,真空

【焼結密度】97.4‰ 1%C添力で緻密化最大化, HRC31

【機械的性質】YS=761MPa, UTS = 1055MPa,伸び= 14.4%.

 ASTM F2885 : YS=680MPa, UTS = 780MPa,伸び>10%

 ASTM F2885(HIP):YS=830MPa, UTS 900MPa,伸び>10%

【備考】TiCが粒界を固定し,さらに微細化作用,機械的性質向上,

 耐摩耗性も向しAP&Cにより1%炭素添加技術で特許出願。

【文献】March 2016 Powder Injection Moulding International

 Vol.10 No.1 P71   

CCM合金 Co30Cr6Mo

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 MIM指南書「金属粉末射出成形ガイドブック」6.2 材料別研究論文ダイジェスト 下記内容をA5サイズで印刷し、P216と217の間に挟んでください。人工関節で使用されるCCM合金のMIM研究データです。

【材質】CCM合金(Co30Cr6Mo),WA平均20μm

【バインダー/配合比】33vol%(パームステアリン40vol%,LDPE60vol%)

【1次脱脂条件】溶媒脱脂,n-ヘプタン×15分

【2次脱脂、焼結条件】加熱脱脂:Ar,2℃/分,450℃×1時間

 焼結:2℃/分,1350℃×2時間

【焼結密度】93%(1350℃) 参考:87%(1300℃),76%(1250℃)

【機械的性質】US=700±20MPa,PS=490MPa,伸び=10%,硬度540Hv

【備考】Co30Cr6Moの融点1390℃、亀裂防止のため加熱は低速のこと。

 ISO 5832-4規格:US≧665MPa,PS≧450MPa,伸び>8%

【文献】Azizah WAHI,”Effect of Sintering Temperature on Density, Hardness and Strength of MIM Co30Cr6Mo Biomedical Alloy” J. Jpn. Soc. Powder Powder Metallurgy Vol. 63, No. 7



2024年10月19日土曜日

2C-MIM実験を考察する「17-4PH+316L 」

 《実験条件》バインダー(パームステアリン酸:PE=50:50)、粉末量は臨界粉末体積率 (CPVP) 測定から決定された(SS17-4PH=72VOL%、SS316L=64VOL%)、金型は引張試験片で2種材料を中央で合流させる。金型温度=35℃、射出温度=150~175℃、保圧=145~150bar、一次脱脂:溶媒(ヘプタン60℃×5H)、加熱脱脂(500℃)、一次・二次連続加熱脱脂・焼結(加熱脱脂16H、500℃×1H+焼結1250℃×3H、全行程時間65時間)

《結果》溶媒脱脂品は接合が不十分。加熱脱脂品は溶け発生。一次・二次連続加熱脱脂・焼結品は接合に成功した。

参考資料:Najlaa Nazihah Mas’ood1, Abu Bakar Sulong1, Norhamidi Muhamad, Farhana Mohd Foudzi, Farrahshaida Mohd Salleh,”The Study of Sintering Behavior of Stainless Steel 17-4PH-Stainless Steel 316L for Two Materials Powders Injection Molding (2C-PIM) Process ” Journal of Mechanical Engineering Vol 16(3), 67-77, 2019  

【珈琲ブレイ句】この論文からの学びは2つ。ひとつは、焼結プロセス中の収縮挙動を膨張計で測定しSS17-4PHとSS316Lがほぼ一致することを確認していること。二つ目は臨界粉末体積率 (CPVP) から決定された粉末量がSS17-4PH=72VOL%、SS316L=64VOL%であること(SS17-4PHの72VOL%は凄く多い!!すばらしい!! 粉末仕様が不明なのが残念。)。失敗事例として溶媒脱脂で接合面に隙間が発生したとの報告がありますが、そもそも”金型温度35℃”が低すぎると感じます。成形体の接合面がミクロ的に密着していなかった可能性がありますパームステアリン酸の融点55℃の金型温度で保圧による融着をさせた方がよかったのでは?)。また、成功した連続加熱脱脂焼結の時間が65時間はかなり長いですね、バインダー仕様が単純なのが原因でしよう。現在、日本製の市販バインダーと脱脂焼結炉なら24H未満も十分可能です。すばらしい研究論文です。たいへん勉強になりました。

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2024年10月15日火曜日

WORLD PM2024 YOKOHAMA展示会のみどころ

展示会場で凄いと思ったもの4選。2024/10/15

①大手樹脂メーカーから『MIMの素』が発売される。MIM用粉末にこの「MIMの素」をブレンドして混錬・造粒(粉砕)すればMIMフィードストックができる。商品名:TENAC-P PT120(3STD系)、TENAC-C FF520(BASF系)、Asahi KASEI

MIM専用プリプラ式射出成型機。射出成形時のプランジャのロック停止問題を解消し、副作用の材料漏れを防ぐプランジャガイドが追加された。漏れを防ぐ理屈は、射出圧を利用してガイドを弾性変形(くさび効果)させ、ガイドとプランジャの隙間を絞ることによる。したがって、射出と材料漏れを止めるタイミングは完全に同期する。商品名:m-MIM(マイクロミム)、SODICK

③-1 高タップ密度水アトマイズ粉末(酸素も少なめ)。平均粒径8.5μm、TD4.6g/cc、比表面積0.25m2/g、酸素量2900ppm 商品名:AT316L-H PF-13F、ATMIX

③-2《後日送られてきたデータシートより》高タップ密度水アトマイズ粉末、平均粒径8.56μm、TD4.76g/cc、比表面積0.24m2/g、酸素量2400ppm 商品名:AKT316L-S3(8) 三菱製鋼

④プラズマ粉末球状化装置。融点が高い金属や酸化しやすい金属*を超高温(3000℃超)で粉末化する。(*タングステン、チタン合金、アルミ合金、タンタル)球状でサテライトやコンタミが無い。すでに完成された成熟技術であるが現在AM用粉末としてその有益性が再認識されている。TEKNA

 【珈琲ブレイ句】ついに大手樹脂メーカーから「MIMの素」が発売されました。MIMを始める敷居がかなり低くなりました。従来から「MIMの素」は存在していましたが、原料の大手樹脂メーカー自ら商品化したのは凄いことです。まだキャピラリーフローのデータが発表されていなかったのが残念ですが、自社開発の超流動性POMを使っているはずですから成形性は抜群に良いはずです。

とりあえず③の粉末と、MIM指南書P76の(2)式で推定した量の「MIMの素」を混合すれば相当良いものができると思います。

《蛇足》m-MIM射出成型機のプランジャガイドは弾性変形しない可能性もあるなぁと感じましたが黙って聞いていました。初めから15μm程度のクリアランス設計であれば流入しないので問題無しでしょう。個人的には従来タイプの材料漏れは気になりませんでした。理由は3つ、材料漏れ量がたいへん少ないこと。プランジャとシリンダー間の材料は絶対に逆流しないので材料替え混入が無いこと。さらに残留時間も短いので熱履歴による炭化膨張によるロックを防止できるためです。申し訳ないけど、クリアランスが大きすぎるのでm-MIM成形機は選びません、従来の仕様をベースに逆止弁外径を適量*1だけ細くしてもらいます(あくまでも私見です)。

*1 関連BLOG

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2024年10月14日月曜日

二峰混合の威力2(耐変形)

 二峰混合の威力第二弾、スランプ変形に関する論文の結果のみ記録する。《粉末3種》「F」WA-AKT316L(2.5)平均粒径2.67μm、「M」WA-AT316-H(PF-5F)平均粒径4.46μm、「L」GA-316L平均粒径13.57μm、《実験の二峰混合粉末》F:L50%、M:L50%、L100%(比較用)、バインダー量31VOL%統一《脱脂焼結条件》1次脱脂:ヘプタン蒸気58℃×4H、二次脱脂:600℃×2H、焼結1350℃×2H、Ar 《結果(変形量)》L100%≒0.9mm>M:L50%≒0.4mm>F:L50%≒0.3mm

【珈琲ブレイ句】F:L50%が一番変形が少ないという結果であり納得です。ただ、すべてのフィードストックはバインダー量が31VOL%なので「L」ではバインダーが多め、「F」では少なめの可能性があるように感じます。でも、各CSL+2~5VOL%のバインダー量設計によるフィードストックで同じ実験をしても順位は変わらないでしょう(有意差は多少減る?)。また、配合比も50%だけでなくその中間に最適解があるように感じます。

《野面積み効果》二峰混合の威力は、微細粉末が大きな粉末を固定する接触点を多くできることです。これは、鶴ヶ城や浜松城の野面積み(のらづみ)のように、大きな石と石の間にできた隙間に小さな石を詰めることで重力が分散され強度が高くなることと同じだと考えます。

参考文献:T. Osada, R, Sakurai, R. Hashikawa, F. Tsumori, H. Miura, K. Toda: “Deformation Control of Large Sized MIM Parts by Charging the Powder Size Distortion” Japan Society of Powder and Powder Metallurgy, Vol. 62, No.3 (2015) pp. 108-113

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2024年10月10日木曜日

相対密度を考える2(高密度化)

 【珈琲ブレイ句】◆焼結で高密度化させるためには一番何が必要か考えてみました。現在の結論(私見)は「グリーン体密度を大きくすること」これは「粉末の粒子間の接触点数の総和を増やすこと」です。具体的には2つ。「微細粉末を使う」もう一つの方向は「二峰分布配合、多峰分布配合」です。そしてこれらを使うフィードストックは「可能な限りCSLに近いバインダー量」にすることです。焼結体が高密度化するだけでなく高精度化も両立できます。◆数十μmの大きな粉末では焼結密度は上がりません。一方、十µmから数µmで密度が向上しますが、さらに細かくサブミクロンにしても逆に高密度化に貢献しません。また、微細粉末になるほど必要なバインダー量は増加し(収縮が大きくなり)焼結体の精度を低下させる恐れがあります。「二峰分布配合」「多峰分布配合」はMIMだけでなくMIM-Like AM(Sinter based Metal AM、BJT、MEX)もたぶん同じです。

関連BLOG「二峰分布混合の威力

関連BLOG「二峰分布混合の威力2(耐変形)

◆大きめの粉末に微細粉末を混ぜる二峰分布配合はMIMフィードストックで実際に使われています。MIMやMEXはバインダーと混錬するので問題になりませんが、パウダーベッドを使うBJTでは微細粉末の流動性が問題になってきます。粉末床のかさ密度が向上しないので、グリーン体の密度を最大化できない課題があると思われます

関連BLOG「バインダージェット法に用いる積層造形用金属粉末材料」

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2024年10月9日水曜日

品質工学パラメータ設計事例7 特性値:焼結密度

 最終焼結密度を特性値としたパラメータ設計の論文を記録する。

《実験計画》粉末:SUS316L、OSPREY、d50=13.0μm、TD=5.0g/cc バインダー:PMMA,PEG,PW,SA(65,8,25,2vol%)脱脂:水脱脂+加熱脱脂(ウイッキング) 試験片:MPIF-50 パラメータ設計:直交表L27,制御因子8種

《結果》寄与率の高いものから、焼結温度:右肩上がり最大1360℃、昇温速度:上凸12℃/min、焼結時間:右肩上がり最大120min、冷却速度:上凸10℃/min、焼結密度:7.6g/cc

参考論文:Praveen Pachauri, Md. Hamiuddin  "THE EFFECT OF SINTERING PROCESS PARAMETRS ON FINAL DENSITY OF SINTRED PARTS PRODUCED BY USING METAL INJECTION MOLDING (MIM)" Noida Insitute of Engineering and Technology, Greater Noida, AMU, Aligarh, India ,TRANSACTIONS OF PMAI, VOL. 43 (2), DECEMBER 2017

【珈琲ブレイ句】パラメータ設計の醍醐味は、水準の効果が上凸の非線形になった時です。この上凸(山)の頂上が最適水準なのです。この報告では焼結温度と冷却速度が上凸になっています。

本題ではないのですが、結果の一部を図示した「Contour Curve」がすばらしい(下図)。2因子を軸とした焼結密度の高低を山の高さ(地形図)として表現したものです。地図では左上と右下に丘の頂上があることがわかります。直交配列実験をしているので2因子の推定値で図示できるわけです、わかりやすくて素敵です。でも、2因子だと地形図として表現できるのですが、3因子だと四次元、4因子だと五次元空間になるので地形図は図示できません。そこで多次元空間を扱うパラメータ設計の登場となるわけです。


関連実験:品質工学を使ったMIM焼結実験(特性値:衝撃強度) 

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2024年10月8日火曜日

品質工学パラメータ設計事例6 Co-30Cr-6MoマイクロMIM

 マレーシア・ペルリス大学のタグチメソッドの論文(2014)を記録する。

《実験計画》粉末:Co-30Cr-6Mo(20μm、TD=5.20g/cm3、CPVP=67Vol%)、バインダー:PS+PE系、バインダー量は不明(33+α Vol%)金型:マイクロダンベル(全長9mm、ダンベル径Φ2.6mm、厚さ0.8mm、ゲート厚さ0.32mm)、直交表:L18、特性値:グリーン体密度の望目特性、制御因子:A射出温度(160,170,180℃)、B射出圧(9,10,11bar)、C金型温度(100,110,120℃)、D射出時間(6,7,8s)、E保圧時間(6,7,8s)

《結果》寄与率の高い順。射出温度は一番高い第3水準の180℃、射出圧は第2、3水準の10~11bar、金型温度一番温度の低い第1水準の100℃。確認実験で推定値内にはいることを確認した。密度=5.222~5.450g/cm3

参考論文:Azizah Wahia, Norhamidi Muhamada, Hafizawati Zakariab ”Optimization of 67% Powder Loading Co-30Cr-6Mo µMIM Part by Taguchi Method ” Department of Mechanical and Materials Engineering, Faculty of Engineering and Built Environment,University Kebangsaan Malaysia

【珈琲ブレイ句】L18を使った正統派のパラメータ設計です。面白いと思ったのは、20μm(たぶん20μmアンダー)の粉末でマイクロMIMの金型を使っているところです。金型のゲート厚は0.32mmと極薄ですが立派に成形できるんですね。実験の範囲内で、射出温度の最大180℃がグリーン体密度を高めます。これは流動性が高くなったためでしょう。次に射出圧は高いほど良いのですが10と11barではあまり差がなくなっているので、多分ゲートが小さすぎるためだと思われます。そして金型温度は一番温度の低い100℃が一番高密度に貢献しています、なぜでしょうか? 交互作用の影響は理解できないこともあります。でも確認実験で再現しているので「なぜそうなるのかがわからなくても」技術としては問題はありません。「Why」を後回しにして「How」で進むのが技術道です。

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2024年9月26日木曜日

MIMの表面粗さ(表面あらさ)

 MIMの表面粗さを表にまとめる。「MIM as sintered」にはクリーニング・ホーニングされたものも含める。微粉MIM(Micro MIM)は3μm程度の粉末を使用した一般MIMとは別のものである。「MIM with surface finish」は、実際に活用されている除去加工量が微量で表面粗さの改善を目的とするものである。

追加:平均直径 100 nm の球形 STS 316 ナノパウダーの表面粗さはRa0.28 1300℃焼結(D1884)

【珈琲ブレイ句】MIMの表面粗さについてまとめました。実際に出荷されるMIM焼結体(多少のクリーニング仕上げ品含む)と”表面を磨く”ものを区別して表にしてみました。◆ところで今回改めて、表面あらさのJISを復習したところ、内容が大幅に改定されているのでびっくりです。30年前のJISでは ”表面あらさ” という表記を使っていたのに漢字に変わっています。Rmaxは完全に消え、断面曲線のRzは参考値Rzjisとして残されています。今後は、世界的に共通なRaを使っていこうと思います。◆表面粗さは出荷と受入の関係でトラブルがよく起こります。理由は測定機器が異なるためです。使っているフィルターが違ったり、測定方式も触針式だけでなく光干渉式や3D測定も登場しているので検査仕様の取り交わしがたいへん重要になってきます。

2024年9月24日火曜日

高密度超固相線液相焼結のメモ

 【珈琲ブレイ句】高密度超固相線液相焼結についてメモしておきます。SLPS(Super solidus liquid phase sintering)は、ホウ素(ボロン)を少量添加すると固相と液相間の温度巾(焼結ウインドウ)が広くなり焼結温度が低温側にシフトし急速に高密度化するものです。

ジャーマン先生の論文*1では、SUS316LにBを0.2wt%添加で、液相と固相温度巾が200℃まで拡大しています。

武川先生の論文*2ではSUS316Lに0.4wt%のB添加で1160℃から焼結が進行し1180℃で相対密度98%を超えています(WA平均8.5μm、大気加熱脱脂、H2雰囲気焼結)。注意:B添加材は、大気加熱脱脂でBの酸化があるから注意せよとあり、さらに、大気中の窒素との反応もある(BN化)と思われるので、脱脂はアルゴンか水素ガス中が良いと思われます。

2部品を一体化するMIM製法、Co-Injection molding(共射出成形、同時射出、オーバーモールディング)で、このSLPSが応用されています。界面結合特性が改善されるためだと思われます。ジャーマン先生の論文*3では0.5wt%のBを添加したSUS316LとM2(工具鋼)の焼結緻密化挙動がほぼ一緒になり、2部品一体化MIM品の接合面は拡散が進行し機械的性質も優れています。

*1 ジャーマン先生 "Master sintering curve concepts applied to full-density super-solidus liquid phase sintering of 316L stainless steel powder"

*2 武川淳二郎 "B元素微量添加SUS316L鋼粉の射出成形"

*3 ジャーマン先生 "Defect-free sintering of two material powder injection molded components" 

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2024年9月23日月曜日

品質工学によるハイブリッド精密鋳造研究

 MIMではないが、品質工学(タグチメソッド)によるHibrid Investment Castingの概要を記録する。ハイブリッド・精密鋳造は、3Dプリンター(MEX,FFF,FDM)で造形したモデルを使ったロストワックスである。

《実験計画》特性値:表面あらさ(望小特性)、L18直交表の6因子:プレワックスコーティング有無(熱風加熱後100℃の溶融ワックス槽に浸漬)、3種モデル、積層方向、積層密度、スラリーパターン濃度、鋳型厚さ、鋳込み材料(SUS3種)

《実験》MEX:層厚0.25mm、ABSプラスチック、鋳型焼成1080℃

《結果》有意性が大きな因子は、ワックスコート有り、積層回転角0度の2つ。他にスラリーパターン密度が低いものに若干効果が読み取れる。最適条件での確認実験で再現性が確認される。(表面あらさ1.6Ra)

【珈琲ブレイ句】MIMと関係ないのですが裏の専門が精密鋳造と品質工学なのでワクワクして読んでしまいました。◆論文から読み取れる細かいポイントは、鋳型が薄いと焼成鋳型が割れること、逆に鋳型を厚くし過ぎると湯回り不良(鋳型の通気性悪化)が発生することです。またワックスコートは鋳型割れ対策に有益とあります。実体験からもその通り!納得です。◆今回は市販のFFF装置で作った3Dモデルなので、材質がABSになっています。おそらく大気焼成であれば相当鋳型内に灰分(煤)が残留するので積層材料の改善は必要になるかもしれません。◆同じコンセプトの2つの商品とメーカー名前だけ紹介しておきます。「そっくりCAST:JUKI会津」「デジタルキャスト:CASTEM」

参考文献:Rupinder Singh,Parlad Kumar, ”Effect of process  parameters on surface roughness of hybrid investment casting" Prog Addit Manuf(2016)1:45-53

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2024年9月22日日曜日

AM製6-4チタン合金の論文(2021)を深堀する

3Dプリンター:AM-MEX方式(Metal-fused filament fabrication、MF3)

フィラメント:6-4チタン(D50=30μm、球状、密度4.43g/cm3、タップ密度2.75g/cm3)バインダー(結合剤3種、エラストマー、可塑剤)41vol%(CSL36vol%)、密度2.96g/cm3、弾性率170MPa、UTS1.15MPa

積層条件:溶融温度240℃、ベッド温度65℃、積層速度10mm/s、ノズル径Φ0.4mm、レイヤー厚0.15mm、引張試験片(10×t4×32、L69mm)、積層体密度2.92g/cm3

一次脱脂(バインダー約40vol%除去):n-ヘプタン溶媒脱脂、64℃×4H +乾燥

二次脱脂・焼結:Ar、二次脱脂4段階昇温MAX550℃×11H、焼結1250℃×4H、Ar中炉冷

焼結体:収縮率14.5%、焼結体密度4.2g/cm3、α-β相微細組織230μm、UTS875MPa、伸び17%

【珈琲ブレイ句】すばらしい研究論文です。MIMフィードストックの開発手順を完璧に踏襲しているので、MIM成形体と比較してMEX方式の積層体密度が低い理由が読み取れます。理由は2つ。①フィラメント自体の密度が低いこと。フィラメント密度が低いのはCSL36vol%に対して足すバインダー量が+5vol%と多いため。もうひとつは、②積層密度が低いこと。積層密度が低いのはMIM射出成形における「保圧」を掛けられないため。

新たな学びは、積層材をフィラメントにするために柔軟性のあるエラストマーを配合しているところです。そこから結合剤はエラストマーと相性の良いPPが主成分かな?と推察できます。

参考文献:Kunal H.Kate、Vamsi K.Balla、 "Additive manufactureing of Ti-6Al-4V alloy by metal fused filament fabrication:priducing parts comparable to that metalinjection molding" Published online 11 February 2021

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2024年9月21日土曜日

MIMのガラスビーズによる表面あらさについて

MIM焼結体(シルバーパーツ)は、その名の通り綺麗な銀色でそのまま出荷できる。しかし、焼結によるヒートカラーやコンタミ付着などで変色することがあり、そのクリー二ングを目的とする工法としてガラスビーズのブラスト(ドライホーニング)が有効である。

ガラスビーズの番手と投射後の表面あらさRaの関係を記録する。SUS304圧延材に投射後の表面あらさ(番手/Ra)→#80:Ra1.0 / #150:Ra0.64 / #300:Ra0.36 / #600:Ra0.16 / #800:Ra0.14

【珈琲ブレイ句】ガラスビーズのホーニング加工による表面あらさは番手の寄与率が高いのですが、量産で注意すべき因子が他に2つあります。ひとつは、射出圧力(射出速度)が高いと表面あらさの劣化が進行していきます。差圧式のドライホーニングでは目安として空気圧力は3Kg/cm2(#220)を上限としていました。注意すべきもうひとつの因子は、ガラスビーズの破壊によるガラスパウダー化により表面あらさが劣化することです。対策は投射材の定期的交換管理になります。

参考:吉田瞬、大竹佳織ら、”ショットブラスト加工表面の表面性状評価パラメータ”、軽金属、第61巻 第5号(2011)、187-191

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2024年9月19日木曜日

国産超小型射出成形機μMIV-2の基本仕様

メーカー:株式会社メイホー

名称:超小型射出成形機 μMIV-2

仕様:竪型、電動プリプラ方式、型締(標準)2ton、プランジャー径Φ8mm、最大射出容量3cc、最大射出速度250mm/sec

 【珈琲ブレイ句】先日行われた福岡県工業技術センター主催のMIMセミナーに参加されたメイホー様の情報です。メイホーの超小型射出成形機でMIMフィードストックによるテスト成形の実績があると聞き早速カタログPDFを入手したので基本仕様を記録しておきます。プリプラ方式なのでバレル径は小さくすることができ本機ではΦ8mmになっています。独自のシャットオフバルブ機構で、可塑材の流入とノズルのON-OFFを同時に行うことができるようです。本体寸法は縦横約50cm×高さ約90cmと超小型なので、ラインの中に組み込んで一個流し生産も可能です。頑張れThe made in Japan!」

《関連ブログ》

なぜマイクロMIMは専用の小型射出成形機を使うのか

マイクロMIMとその成形機について考える

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2024年8月25日日曜日

無料セミナー「MIMの基礎と金属部品製造への応用」

《無事終了しました。14社24名の参加がありました。セミナー後、当センターのMIM研究設備(Sodickプリプラ成形機TR20EHVと島津VESTA炉)の見学会が行われました。》

 中小企業デジタル化支援事業 令和6年度「金属粉末射出成形の基礎と金属部品製造への応用」セミナー 

 日時:令和6年9月18日(水曜日)

 場所:福岡県工業技術センター機械電子研究所

2024年8月11日日曜日

なぜマイクロMIMは専用の小型射出成形機を使うのか

 【珈琲ブレイ句】まずマイクロMIMを定義しておきます。スイスのMIMメーカーParmaco社によると「重量が 1 g 未満で、特に微細な機能を備えた部品」としています。もし、通常の成形機(40トンクラス)を使ってマイクロMIMを成形した場合どんな課題があるのか考えてみました。この裏返しがマイクロMIM専用射出成形機を使う理由になるはずです。

課題1:金型は成形機の大きさに合わせて大きくなるので、スプル・ランナも大きくなり、成形体が1g未満であれば歩留りが非常に悪くなります。これはスプル・ランナだけを成形している感じになり、マイクロMIM成形体は「バリ」扱いになりかねません。

課題2:通常の射出成形機のシリンダは大きいので、射出量(計量)の精度が成形体の大きさに対して相対的に悪くなります。試算してみます。【前提条件】通常の射出成形機のシリンダー内径をΦ35mm、マイクロMIM用射出成形機のシリンダー内径をΦ10mm、射出成形機のメカ的位置決め精度を±10μm 、フィードストック密度5g/cc 【結果:計量精度の差】通常の射出成形機(Φ35)の計量精度≒±0.35g、マイクロMIM用射出成形機(Φ10)の計量精度≒0.04g

成形体1gの成形体を成形するための計量精度が、通常の射出成形機の±0.35gだとすれば、繊細な制御は難しいことが推察されます。計量精度は、シリンダー径が大きくなるほど、その2乗で悪くなるので、いかにシリンダー内径を小さくするかが、マイクロMIM専用射出成形機の肝なのですね。

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2024年8月6日火曜日

焼結シミュレーションLive Sinter™ を掘下げる

 【珈琲ブレイ句】SBAM(MIM-Like AM)であるBJT積層体の脱脂焼結用シミュレーションソフトLive Sinter™(Desktop Metal)についてまとめておきます。このソフトを使うとバラツキ±0.3%、偏差(カタヨリ)を目標寸法の1%以内にすることができるそうです。

ステップは次の通りです。一回試作的焼結は必要になり。①試作ベースで焼結品を造る ②3Dスキャニングして3Dデータ取得 ③3Dデータを取り込んで学習させ予測した歪を補正する。④補正されたシミュレーション後の3Dデータを使ってBJTで積層体を造り脱脂焼結する。

歪補正は、不均一収縮、摩擦、重力、弾性変形、塑性変形の物理データベースが使われています。

少し意地悪に考えると、「SBAM-BJTは焼結変形が大きい」ということでもあるのですが、BJTは粉末粒子間距離をMIM程に最短化できないので仕方がないのです。しかし、このシミュレーションソフトを使えば、その欠点を克服することができて、バラツキ±0.3%、偏差1%以内が可能になるのです。ユーザーの感想は次の通り:試行錯誤が無くなりリードタイムが短縮できた。焼結サポートが不要になった。

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2024年7月30日火曜日

MIM品質における課題の分離

 【珈琲ブレイ句】MIMの品質は2つに分解できます。それは「設計品質」と「製造品質」です。この2つは分離して対応しましよう。設計品質の不適合を、下流の製造工程で改善することはできません。初期流動管理を終了させてから製造部門の品質管理へバトンが渡されるのです。

設計品質:MIM部品の素形材形状設計(MIM用にVE設計しているか)、金型方案設計(MIM不良が発生しない方案になっているか)、金型寸法設計(拡大率、伸び尺が適切に使われているか)、工程設計(QC工程表の最適化)、金型製造品質の検証

MIM製造品質:製造品質管理QC、工程内検査・管理、出荷検査、品質改善


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2024年7月16日火曜日

MIMの工程能力指数はCpk、AMはCpを使う理由

 【珈琲ブレイ句】工程能力指数は、規格の幅に対する製品のバラツキ分布の大きさ(精度、精密さ)と平均値の偏り(真度、正確さ)を評価する指標です。工程能力指数が1.33を超えると工程は安定していると判断されます。計算式はQC3級のテキストで復習していただくとして、表題について説明します。

MIMの工程能力指数にCpkを使う理由:MIMは金型転写だから。金型の寸法が初めから偏っていたら、製造部門で調整・制御することはできません。金型の精度に依存するのです(方案設計含む)。つまり金型が命なのです。製造部門で管理する寸法品質は、収縮率とスランプ変形ぐらいです。寸法を成形条件で調整すると充填不良(ウエルド、ヒケ等)やオーバーパッキング(抜け不良、バリ等)が発生しますので、現場任せにせず金型を修正しましょう。ちなみにCpkのkはカタヨリのKで日本語です。

AMはCpを使う理由:AMはバラツキ分布の平均値と規格中心とのカタヨリを簡単に補正すことができるのでCpが使えるのです。NC制御の加工機械と考え方は同じです。また、バラツキはAMの積層条件で改善できる可能性があり、当然平均値も動きますので、CpとCpkを評価値としてパラメータ設計(タグチメソッド)等で最適化することをお薦めします。ただし技術開発(パラメータ設計)は規格を意識しないのでβ^2/σ^2等のSN比で感度とバラツキの最適設計を行います。

関連BLOG: 品質は「分散」と「平均値」の合わせ技で決まります

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2024年7月11日木曜日

ショットブラストとショットピーニングの違い

 【珈琲ブレイ句】MIMや金属3D造形で頻繁に登場するアシスタント的工法があります。それは、ショットブラストとショットピーニングです。わかりやすく2つの違いを説明します。加工対象をMIMとMetal AMだけに絞り、ショットブラスト投射材はガラスビーズだけにしています。

《抽象的なフワっとした説明》

ガラスビーズ・ショットブラストは優しく表面を綺麗にする。ショットピーニングは乱暴に表面を強くする。

《具体的説明》

ガラスビーズ・ショットブラストは、空気流の差圧力を利用して、ガラスビーズをセラミックノズルから噴射させて、被加工物の表面のスケールを除去したり、表面あらさを向上させる工法です。空気圧は減圧することを薦めます。圧力が高いとMIMの表面あらさが逆に劣化します。またガラスビーズは割れて粉末化するので交換管理が必要です。調質鋼では、すこ~し硬度が高くなります。

ショットピーニングは、メカ的(空気加圧式、回転インペラー式)に、鋼球を高速に加速して被加工物の表面に当て、表面を改質するものです。表面は微小な凹凸になり圧縮応力が残り硬度や疲労強度が向上します。さらにヒートショック対策としても効果が期待されています。圧縮残留応力は材料力学的には有利ですが、片側だけに投射するとメチャクチャ「反り変形が発生」しますので実験計画法等によるピーニング条件の最適化は必要になります。

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2024年7月10日水曜日

金属3Dプリンターを活用するJAXA

本BLOGの守備範囲ではないが、レーザー照射で粉末を焼結造形するDED(金属3Dプリンター)を掘下げる。そして、MIMと比較してMIMの優位性を考える。

『DEDの製造工程(一例)』①トポロジー形状最適化設計(計量化、ラティス構造、水流配管設計、一体化) ②積層造形形状修正設計(シミュレーションによる変形予測、サポート付加、肉厚およびL/Dの修正、機械加工クランプ部確保) ③金属3D造形(DED) ④サポート除去加工 ⑤熱処理(応力除去、時効処理、窒化処理) ⑥表面処理(ショットブラスト・表面あらさ改善、ショットピーニング・表面あらさ改善&硬化) ⑦機械加工(エンドミル加工、放電加工、流体研磨) ⑧検査(同時造形試験片の強度試験、カラーチェック、X線CTスキャン)

 【珈琲ブレイ句】JAXAがDEDを使って製造した月面探査機SLIMの脚は「ラティス構造体」で高強度&最軽量ですが、これはMIMでの製造は困難です。軽く作るだけならば「ポーラスMIM」もありますが、大きさにも限界があるので採用されないでしょう。高機能金型の水冷配管も小さな金型であれば樹脂中子を使えば技術的には可能ですが、金型費用が掛かるのでランニングコストが高くり、一点物の金型には採用されないでしょう。

しかし、MIMも当然優れています。MIMがDEDより優れていること5選。①造形後に残留応力や表面性状劣化が無い。②造形物の内部品質が良い(ちゃんと成形すれば)。③サポート切断が不要(MIMアシスト変形駒法*1)。④使える材質が多い。⑤表面あらさがRa1.5~2μm(Rmax6~8)と良い。

『まとめ』やっぱり量産の3D形状部品はMIMに任せてください。トポロジー最適化設計の航空宇宙部品や高性能金型用の水冷配管はDEDに一任させていただきます。

JAXA:金属積層造形を用いたラティス構造の機械特性の取得

*1 MIMアシスト変形駒法、MIM指南書 P30 図2.14

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2024年7月8日月曜日

成形金型のゲートは何のためにあるのか

 【珈琲ブレイ句】圧粉焼結PMの金型にはゲートは存在しません。しかし同じ粉末冶金でも金属粉末射出成形の金型には多種多様なゲートが存在します。

それでは「ゲートは何のためにあるのか」を深く考えてみます。できるだけ抽象的概念で考えた方が勉強になるはずです。ゲートの目的と機能また副次的作用をまとめておきます。

◆射出成形金型のゲートの目的と機能 5選◆

①射出成形機から金型内部へ成形材料を流し込むためのスプルー・ランナーから接続する最終解放口。

②スプルー・ランナーおよびゲートの方案設計により材料の流れ速度を制御する。

③スプルー・ランナーおよびゲート方案設計およびゲートの大きさにより圧力損失を制御する。

④射出成形および保圧を十分にかけた成形体品質を維持するために相対的に早く固化し成形体材料の逆流を阻止する。

⑤ゲート位置を方案設計上の流れ経路を制御する設計因子とし、ウエルド合流点、最終充填位置とガス逃げ位置を制御する。

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2024年7月5日金曜日

プリプラ方式の射出成形機が改善された

 【珈琲ブレイ句】昔のはなし。小物のMIM成形体を高品質で成形するためにプリプラ方式(Sodick Vライン)の射出成形を導入したことがあります。Sodickは放電加工機等を造っている世界的メーカーなので射出成形機も常識に囚われないユニークな機械を創るものだと惚れ込んで導入しました。

《大問題発生》導入して数週間後に大問題が発生しました。プランジャ(ピストン)がロックしてビクとも動かなくなってしまったのです。原因は、バレル内径とプランジャ外径との隙間△に金属粉末が嚙みこんだためでした。対策は、不本意ながらプランジャ外径を少し小さく追加研磨し隙間△を大きくしてもらいました。MIMの場合は隙間△は、プラスチック仕様より大きくする必要があるのです。

《改善されていた》近年、「m:MIM」なるMIM専用機が登場しました。追加仕様として、プランジャ後部に温度制御が付けられています。これは、射出抵抗を減少させ材料排出量を減らすものです。凄いのは、この追加仕様部分だけを既存のVラインに後付けもできるところです。Sodickは日々研鑽しており流石一流日本企業です。 注意:欠点(利点?)もあります。射出成形するたびに成形材料が隙間△を通りプランジャ後部から漏れる「うんち漏れ」があります。少量なので私は気になりませんでした、それより古い材料が新しい材料に混入しないという利点を優先しました

補足:通常のインライン射出成形機でも全く問題なくMIM成形することが可能で、ほとんどのMIMメーカーはインラインが主流です。さらに、バリを気にしなければ単純な油圧式射出成形機でもMIM成形は可能です。マシンタイムはメチャクチャ伸びますが、むしろ凝固中に保圧をかけ続ける結果となるので良質な成形体を作ることができます。

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2024年7月1日月曜日

新デザインに変更しました

2017年から開設した『日曜MIM知る』は、「ブログ閲覧数7万達成」という節目を迎え、デザインを全面リニューアルしました。今後も3つの目標を掲げ、更なるグレードアップを目指します。

《リニューアル内容》①落ち着いた見やすい配色と配置にしました。②1ページ3つのブログ表示にしました。③Topページのフッターに、過去30日間の人気投稿トップ10を載せました。

《3つの目標》①MIMを知ってもらう活動をする。②MIMを始めたい人をバックアップする。③MIMの品質向上と不良低減のサポートをする。

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2024年6月30日日曜日

現状を変えられない企業体質について

 珈琲ブレイ句現状を変えられない心理をまとめておきます

 

それは「サンクコストなどの負の心理」問題です。小さな改善から大きな改善へ、さらに改革へと変化の規模が大きくなるほどその問題が障壁になってきます。

 

具体的には、「損失回避」失敗したくない。「保有効果」従来技術を高く評価する傾向。「サンクコスト(コンコルド効果)」今まで投資した努力を捨てられない。「確証バイアス」自分を肯定する情報だけを集める。などの心理が(本人にも気づかない確信となって)働き、「現状がそんなに悪くないのにわざわざ変える必要がない」となるのです。

 

日本の品質管理QCを習得したチャレンジ精神と変化を上等とする製造技術者との相互研鑽はとても有意義で元気をもらえます

MIM金属粉末射出成形セミナー御礼

 サイエンス&テクノロジー様 主催のMIM金属粉末射出成形セミナーを無事実施することができました。会場に集まっていただいた受講者様と直接質疑応答をすることができ、また新しい気づきを学ぶことができました。大変有意義なセミナーでした。ありがとうございました。

各製造工程と留意点、最適な材料の選び方、設計事例、不良原因と対策、
MIMと共存共栄が期待される最新金属3D積層装置など

セミナー終了後の名刺交換で、受講者様の参加目的を聞くことができました。その目的は4つにまとめることができます。①MIM事業を自社内で始めるための基礎を学ぶため。②MIM部品の不良対策として原因・対策のヒントを得るため。③国内MIMメーカー選定のためのMIM設計技術を学ぶため。④Metal AMとの共進化による販路拡大のヒントを得るため。

【日曜MIM知るINDEX】MIM指南書増補セルフ

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】